駅のそばで、歳に似合わぬ早足で歩くおじいさんを見かけた。センスのいいスーツに旅行カバン、高級な感じの革靴を身につけている。いわゆるロマンスグレーの趣。でも彼を見て僕は、「何かが足りない」と感じた。

彼に足りないもの。

何故かすぐには把握できなかった。が、このおじいさん、気付いてみれば下半身が丸出しだ。ズボンとパンツを履いていないじゃないか。

「よっぽど急いでいたんだよ」とは友達の弁。 そうじゃないだろう。