なぎら健壱の持ちネタで、「ミイラになった少年」というのがある。ある少年がかくれんぼの最中行方不明になっていたんだけど、数十年経った最近、少年がずっと隠れていたと思われる廃倉庫からミイラ化して発見されたのだという。

死に至るまで、そして死してもなお、貫き通すものがある… なんというか、「意志と信念」を感じさせるエピソードではなかろうか。立てヒザで、狭い扉のスキマから外の様子を伺ったまま固まっていたという素敵な余談まで用意されてるし。僕のお気に入りのネタのひとつだ。

しかしそんな前フリとは関係なく、先程飲み屋街のビルで見た酔っぱらいの話をさせてもらう。ビルの共用トイレに入ると、若者がひとり眠りこけていた。冷たい床の上で、モップを片手にうつぶせで横たわっている。倒れる前に一応、そばに立ててあったそのモップで体を支えようとしたらしい。力無く柄の部分を握る手に、彼の努力の跡はうかがい知ることができた。

ところで、彼があのままミイラ化していたらどうだろう? 「モップをライフルに見立てて狙撃手ごっこ。ほふく姿勢で待機したまま死亡」 そんな感じだろうか?

よく分からない結論だが、僕も相当に酔っていたことだけはよく伝わるエピソードである。