中学時代、クラスで「北斗の拳ごっこ」という遊びが大いに流行った。北斗の拳とは、主人公が経絡秘孔という必殺のツボを攻撃する拳法で悪党を倒していく、という内容のマンガである。敵の悪者が、「アワビュッ」とか「ぱっ・ぴっ・ぷっ・ぺっ・ぽー」などの一風変わった断末魔を上げて死ぬのがこの作品の特徴で、マネをしたぼくらも、当時はずいぶんと珍奇な絶叫教室内に響かせていたものである。まあ今思えば、相当のどかなクラスであったのだろう。

とにかくそんな環境だからして、当時はぼくも相当に色々な「ツボ」を突かれたものだ。それはもう、全身をくまなく突かれたと言っても過言ではない。

で。

今になって、そのことでちょっと気になっていることがある。

拳法の中には、いわゆる「3年殺し」のように遅効性のツボを突く攻撃があると訊いたことがある。『北斗の拳』でもその類の技は幾度も見た。では、同じようにぼくも件の遊びを通して何らかのツボをヤラれてしまったという可能性は果たしてどうなんだろう。実はその懸念に、近年歳悩まされているのである。

花粉症やアトピー性皮膚炎、深爪に虫歯、精力減退、記憶力の低下、責任感の欠如に遅刻癖……ぼくは現在幾多もの問題を抱えており、どれも年々深刻な症状を示している。異常とさえ言って良いだろう。これらがあまりに度を越しているので、みな、当時受けたツボ攻撃が年月を重ねる毎に効いてきているでは、と思えてきてならないのである。

ああ、なんということだろう。この有り余る苦しみは全部、かつて受けた攻撃のせいだったのか。当時のアレさえなければ!あれさえなければ、受験に失敗することも仕事の業績が低迷することもお金がなくて苦しむことも女性にモテずに悩むこともなかったのに!

というわけで、人体のツボに詳しい人にぜひ一度じっくり看てもらいたいと思っているところです。東洋医学に通じている方、回復のツボについて良くご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください。

いっそのこと人生に引導を渡してくれるツボを教わった方が良いのかもしれませんが。

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ところで余談だけれど、先日レンタル屋でアダルトビデオを返却するときに、巻き戻し忘れのまま返そうとして店員厳しく注意されてしまったことがある。

「次回から注意して下さい」と厳重に申しつけられたのをその場は適当に聞き流していたわけだが、よく考えてみればその状態ってかなりデンジャーである。

だって件のビデオをそのまま再生すれば、どの場面でビデオ鑑賞を終えたのか、どのシーンでフィニッシュしたのか、ぼくのツボが店員に丸わかりではないか。

ツボをよく知っている人募集とは言ったものの、こういうのはちょっと本意ではない。